「心を整える。勝利をたぐり寄せるための56の習慣」(幻冬舎)
サッカー日本代表でキャプテンを務めた長谷部誠選手による自分を貫くメンタル術を記した本。2010年の南アフリカW杯後の翌年に出版され、話題を呼びました。世界の第一線で活躍続けるアスリートのエッセンス。多忙な現代社会を生きる全ての人に学びがある内容です。
- 頭の中をクリアに
- 自分と向き合う
- アップデートし続ける
頭の中をクリアに
整理整頓。負の言葉を言わない。自分が良いと思ったものを一途に使い続ける。長谷部選手はこれらを意識していると言います。
朝起きたらベッドメイクし直す。本棚を整理する。ダイニングテーブルの上に物が散らからないようにする…。そういった日常にある些細な積み重ねがやはり大事なのです。
「気を遣いすぎると精神的に負担になるので、100点満点で言えば80点くらいの清潔感を保つようにしている。心がもやもやしたときこそ、身体を動かして整理整頓をしている。心の掃除もかねて」
競争社会に生きる私たちは、多くの不平不満を募らせてしまうもの。だけど、長谷部選手はネガティブな発言は心を乱す要因だと考えています。
「負の言葉はすべて、現状をとらえる力を鈍らせてしまい、自分で自分の心を乱してしまう」
「恨みを貯金しても仕方がない。ボールを蹴って身体を動かしてもいいし、何かリフレッシュして、次に向かってリスタートした方がはるかに建設的だ」
時計、レストランでのメニューはお気に入りのものを使い続ける。家で炊くお香も同じ。「趣向に関しては冒険しない性格」というだけあって、周りに振り回されないことも大事です。
「流行を追ったり、いろいろ試してみるのも刺激的だけど、僕の場合、一番いいと思ったものを一途に使い続ける。そうすると心が本来いるべき場所にスッと戻って、落ち着くのだ」
自分と向き合う
長谷部選手は自分と深く向き合い、他人とも会話を重ねることで、自分が何をすべきかが分かると説きます。
「自分と向き合う方法は、主に2つある。 ひとつは孤独な時間を作り、ひとりでじっくりと考えを深めていくこと。僕にとっては読書も、ひとり温泉も、ここに含まれる。そしてもうひとつは、尊敬できる人や仲間に会い、話をすることで自分の立ち位置を客観的に見ることだ。僕はヨーロッパでプレーする日本人選手たちに会うたびに、自分がこれからどんな道を進むべきかのヒントをもらっている」
そして、自分が正しいと思ったことを続ける。それこそが成功への秘訣です。
「焦らず我慢して継続すれば、いつか「組織の成功」と「自分の成功」が一致する。それを目指しているのであれば、組織のために自分のプレーを変えることは自分を殺すことではなくなる」
「普段から正々堂々と勝負していれば、たとえまわりから陰口が聞こえてきたとしても、まったく気にならない。逆にそういうことを言う人をかわいそうだなと感じる。 サッカー選手としての力はピッチの上で証明すればいい。ゴマすりや媚は自分の覚悟を弱らせてしまう」
自分が決めたことを達成するために、覚悟と自覚が必要なのです。
アップデートし続ける
新しい戦術やトレーニング法などがめまぐるしく変わるトップアスリートの世界。そこでも自分を過信しすぎず、学び続けることが大切だと説きます。
「僕は何に対しても、固定観念にとらわれないように注意している。正解を決めつけてしまうと、自分が知らない物の見方や価値観に対して、臆病になってしまう可能性がある。自分の殻に閉じ込もってしまわないためにも、正解はそのときどきに応じて変わるものだと考えるようにしている」
常に自分をアップデートし続け、変化を恐れない。
「脱皮しない蛇は破滅する。人間もまったく同じだ。古い考えの皮をいつまでもかぶっていれば、やがて内側から腐っていき、成長することなどできないどころか、死んでしまう。常に新しく生きていくために、わたしたちは考えを新陳代謝させていかなくてはならないのだ」
結果を出し続けるため、やるべきことはシンプル。自らのスタイルを忠実に貫くことで先は見えてくる。
ちなみに、この本の印税は東日本大震災の被災地に寄付されています。ピッチ外でも手本となるキャプテンのメンタル術でした。